2014年8月29日金曜日

模擬試験②

1.ダイヤモンド

(1)次の文章を読み、空欄に適切な数字を答えよ。

ダイヤモンド原石を最も普及しているラウンド・ブリリアント・カットに加工すると、
八面体原石の(  )%以上が失われてしまう。


(2)次の文章を読み、空欄に入る適切な語句を答えよ。

4C中の「カット」は、研磨済みのダイヤモンドの「(A)」と「(B)」のことを指します。
(A)は研磨石のファセットの角度、相対的な寸法や割合および両社の相互関係を表す用語であり、(B)は研磨の質やカットの正確さ、あるいは対称性を表す用語です。
ダイヤモンドカッターは光の効果が最大限に発揮できるように、最適な(A)を施し石内外部の反射光量を増大させ、かつ均質な反射光にするために丁寧な(B)を施します。
その一方輝きを優先させると、原石からの(C)低下は避けられません。わずかな重量変化が価格に大きな差をもたらすので、カッターはダイヤモンドの品質に応じて輝きと(C)の双方を考慮して加工しています。


(3)次の文章を読み、空欄に入る適切な語句・数字を選択せよ。

八面体の結晶から( 1 / 2 )個のラウンド・ブリリアントが得られるのに対し、
ファンシー・シェイプの場合は普通( 1 / 2 )個の製品を得ています。
加工時間を比較すると、ファンシー・シェイプの場合は工程のほとんどが手作業で行われるため、
労働コストは(割安 / 割高)になります。


(4)次の文章を読み、空欄に入る適切な語句・数字を答えよ。

基本的にラウンド・ブリリアント・カットは(A)面ファセットが刻まれています。
一般ファセット数を増やしていくと、切削量が多くなります。
流通しているダイヤモンドのサイズでは(A)面カットで十分であり、優れたカット石なら面数の多い少ないは輝きに影響をあたえるような問題にはなりません。
また、(A)面カットはカットに歴史があり量産体制ができあがっているので、顧客が面数にこだわる場合は(B)での優位さを強調すればよい。


(5)空欄に入る国名を答えよ。

①産出金額が多い鉱山
ボツワナ、ロシア、(A)、カナダ
②産出量(ct)が多い鉱山
ボツワナ、(B)、ロシア、コンゴ民主共和国
③高級品質あるいは大きな原石で単価が高い鉱山
ナミビア、シエラレオーネ
④品質が悪いあるいは小さな原石で単価が低い鉱山
(B)、コンゴ民主共和国

(A)・・・キンバリー鉱山は1871年にデビアス社が開発した鉱山で、1914年に閉鎖しており現在は「ビックホール」として観光スポットとなっている。
世界を引っ張ってきた産出国だが、現在は枯渇する鉱山が増え産出国としての順位を落としている。
(B)・・・鉱山は産出量は多いが粒が小さく低品質であることが特徴。
きわめて高価なピンク、グリーン、イエロー、ブラウンなどファンシーカラーの原石も産出している。


<答え>
(1)50
(2)A.プロポーション B.フィニッシュ C.重量保持率(歩留まり)
(3)2 1 割高
(4)A.58 B.価格(価格差など類似語であれば可)
(5)A.南アフリカ B.オーストラリア(アーガイル鉱山)


2.販売

(1)各ファッションスタイルとジュエリーの選び方の傾向の組み合わせを答えよ。

*スタイル*
A.カジュアルなスタイル(気軽に着られる普段着や活動しやすい服装)
  特徴:踵の低い靴、体を締め付けない素材・サイズ、男女共通で着られるデザイン
B.スタイリッシュなスタイル(時代性を強く反映した都会的でモダンな服装)
  特徴:踵の太い靴、大きめの小物、マニッシュだが色使いやシルエットで女性らしさを表現
C.エレガンスなスタイル(女性の自然で柔らかな優しさや美しさを表現する服装)
  特徴:ディテールにフリルやレース、髪型やメイクが甘め、パステルトーン

*ジュエリーの選び方*
a.シンプルでベーシックなもので、トレンド感を重視したものを選ぶ。
 小さくても重厚感やクオリティが高いジュエリー、シャープなラインや抽象的なデザインを好む。
b.家に居る機会が多い人は小ぶりなもので常時同じジュエリーを付けている。
洋服と同じようにジュエリーも家用と外用に分ける傾向にある。服装に合わせて小物にも気を配るため、ジュエリーはポイントでつけるものを選ぶ。
c.ファッション全体がデコラティブになりがちな人は、ジュエリーはファッションに負けない装飾的なデザインや素材を選びがちである。
シンプルめの人は、素材や質感などジュエリー全体のディテールにこだわり、クオリティで選ぶ。

<答え>
A-b B-a C-c

2014年8月8日金曜日

5-1 販売知識①

①マーチャンダイジングの目的

商品を仕入れる際、営業方針や販売計画などと連動しながら、全体的な視点で仕入れ活動を統制しなければならないです。これをマーチャンダイジングといいます。
アメリカマーケティング協会(AMA)では以下のように定義しています。
「企業のマーケティング目標を実現するために、最も有効な場所、時期、価格および数量で、特定の商品またはサービスを市場に提供する際に必要となる計画」

マーチャンダイジングの目的は
1.適切な品揃えにより、顧客のニーズを充足すること
2.商品在庫への効率的な資金投下により適正な利潤を得ること
この二つの目的のバランスがとれた在庫の状態を「均衡在庫」といいます。
「均衡在庫を実現して、効率的な流通を行うこと」が目的ともいえます。

②マーチャンダイジングの要素を表す言葉 5R

「適切な商品 Right goods」を
「適切な場所 Right place」で
「適切な時期 Right time」に
「適切な価格 Right price」 で
「適切な数量 Right quantity」を
市場に提供すること

③商品の分類の重要性

顧客ニーズをとらえる手段として、商品の本質について理解と商品の分類の知識が問われます。
「商品」とは目に見える「モノ」だけを指すのではなく、むしろその商品を使うことによって得られる「ベネフィット(便益・効用)」が商品の本質と捉えられるべきです。
商品の分類は商品構成を組み立てる基準作りです。
言い換えれば顧客ニーズをとらえる「モノサシ」となります。
例えば、シンプルなプラチナリングを「素材分類」としてプラチナのチェーンやイアリングと並べるよりも、ホワイトデーのプレゼントに最適なペアリングとしての「用途分類」でアピールする方がよりベネフィットが明解になります。
顧客ニーズに合わせた商品分類を考え、時流に応じて柔軟な品揃えの発想ができるようにすることが大切です。

④モデル・ストック・プランとは

商品の構成を考えることは、顧客ニーズの充足する商品計画の中核となる部分です。
これを商品ミックス方法と言います。
モデル・ストック・プランとは買回品を対象とする商品ミックス法です。
買回品は、総じて価格が最寄品より高く、非消耗品が多いです。
購入頻度は低く、購買は非反復的、非定期的です。ジュエリーの商品ミックス方法として適していると言われています。
このプランでは品切れよりも在庫過剰を防止することに主眼を置かれます。
また、顧客が比較選択して買い物をたのしめるような品目奥行きが要求されます。
商品ラインごとに販売予測を行い、これに基づいて商品ライン別に在庫予算の総額が設定されます。
次にこの予算を商品ラインを細分化しながら配分します。
配分方法は、まず価格帯別の配分、次に価格帯での素材やデザインの分類による配分です。
注意すべき点は以下の通りです。
1.基本的には同一商品の反復購入はないので、在庫の補充の際は同一の商品ラインの中で
品目の新陳代謝を心がけ、新鮮さを保つ。
2.価格帯が広いので、プライス・ゾーニングによって商品ラインごとの価格帯別の在庫配分を計画する。
3.品目数が多く、奥行きのある品揃えが有利となる。
反面、過剰在庫にならない注意が必要。
4.商品分類では商品ラインを顧客ニーズに合わせて動態的にとらえるべき。
シーズンごとに商品を見直し、変化に対応する必要がある。
5.過剰在庫・商品の鮮度落ちにならないために、一定在庫期間を経ても販売できない品目は
早めにマークダウンしてデッド・ストックになるのを避けなければならない。

⑤プライス・ゾーニングとプライス・ランニング

商品ラインの価格帯を大きく高価格、中価格、低下価格の3つに分けて商品ミックスを行うことをプライス・ゾーニングといいます。
例えば、K18のダイヤ・ファッション・リングについて、低価格帯を3万円以下、中価格帯を10万円前後、高価格帯を20万円以上などと価格帯でくくり、それぞれの価格帯の中でさらに細分化した価格のポイントを置く。
たとえば低価格帯では9,800円 19,800円 29,800円などです。
これらを価格線(プライス・ライン)と呼びます。
ジュエリーは価格の妥当性が消費者に分かりにくいため、価格線を明確にして集中化した方が、
消費者にとって、商品アイテムの比較選択が容易になります。
このようなプライス・ランニングを行わなかったとしても、一定の価格線に販売は集中します。

2014年8月6日水曜日

模擬試験①

★素材★

1.次の記述の内、正しいものを二つ選んで記号で答えなさい
(a)国内のダイヤモンドのグレーディングと価格の関係は、輸入者、メーカー、卸業、小売店によってそれぞれ異なっており一律ではない。しかし、輸出国は国別に価格表をつくり、独自のものを使用している
(b)ダイヤモンドの価格は市場原理で決まり、一定の決まった価格ではなく、経済や各市場の供給や需要で決まる
(c)海外の業界では、グレーディング・レポートは、まだ日本ほど普及しておらず、その意味では日本はグレーディング先進国である
(d)海外ブランド店には、日本の消費者向けに自社のグレーディング・レポートを発行する会社はない。
(e)グレーディング・システムが決まると、それを普及させるのには教育が伴わなくても用語だけ決まれば普及できる。


答え b c


2.空欄を埋めなさい。
青空のような見え方を表す色を色彩科学では(A)という。それは私たちの周辺でふつうにみかける色と違って、(B)感じに見えるだろう。(C)のような色の見え方は他にもあって、それらの共通な性質は(D)があることである。


答え A開口色  B表面が無い  C天然宝石  D全体的に透明性
解説 一般の不透明な物体の色の外観様態が「表面色」、青空や宝石類の透明色の外観様態を「面色または開口色」とよびます。

3.ダイヤモンド原石の採掘、研磨に関わる二つの文章に当てはまる国をそれぞれ2カ国ずつ明記せよ。
A ダイヤモンド原石を採掘し研磨する国
B ダイアモンド原石を採掘しないが研磨する国


答え Aブラジル 南アフリカ  Bイスラエル ベルギー


4.空欄を埋めなさい。
オーストラリアのアーガイル鉱山から産出するダイヤモンド原石の品質は50%が工業用、45%が(A)で(B)は5%にすぎない。
また、イエロー、ブラウン、の色を帯びたものは、それぞれ(C)、(D)と愛称を付け、ファインシー・カラー・ダイヤモンドとして売り出しています。


答え Aニアジェム  B宝石用  Cシャンペン  Dコニャック 



5.ラウンド・ブリリアント・ダイヤモンド加工について誤っているものを一つ選べ。
(a)硬さの方向が問題にならない作業はブルーディングである。
(b)カッターの目的は、魅力的なだいやモンドに仕上げることと、最大の歩留まりを得ることの妥協点を見つけることである
(c)テーブル面と小さいキューレット面は並行している
(d)テーブル、ベゼル、パビリオン、メインを研磨する職人はフィニッシャーと呼ばれる
(e)ソーイング・マシーンの発明により、1個の原石から2個の原石が得られるようになった。


答え d
ブルーディングは共ずりのこと
ブロッキングと呼ばれる作業工程であり、ブロッカーと呼ばれる 



6.ダイヤモンドの特性について誤っているものを一つ選べ
(a)ファセット・エッジが摩耗することもある
(b)ペアデット・ガードルはダイヤモンドの類似石には見られない特徴である
(c)数々の優れた性質は宝石のキングであると同時に材料のキングの評価を与えてもよい
(d)透明度が抜群であることに加え、複屈折性であることが輝きを強化させている
(e)親油性もX線に対する蛍光性もダイヤモンドの識別に利用される


答え d
単屈折性である。
ペアデッド・ガードルはブルーディング時に小さいフェザーがついてしまうこと


7.ブリリアント・カットについて誤っているものを一つ選べ
(a)マザラン・カットはベルッツィ・カットよりも多数のファセットが刻まれている
(b)テーブル面が小さく、キューレットが大きく、全体の深さも相当深い石は一つの原石から加工された石と思われる
(c)オールド・ヨーロピアン・カットは研磨面数の点ではブリリアント・カットと呼べる。
(d)ソーイング・マシーンの開発は輝きを考慮したモダンなブリリアント・カットの登場に深く関係している
(e)テーブル・カットされた石のテーブル面は、8面体をソーイングした石のテーブル面と同じ数の研磨方向がある


答え a


8.ダイヤモンドのカット評価について誤っているものを一つ選べ
(a)フィッシュ・アイ、ダーク・センターの見られる石はGOODの総合評価をされない
(b)小さいキューレットが刻まれている石と刻まれていない石とでは同じ評価をする
(c)カットの総合評価が高い石は、歩留まりをある程度犠牲にしている
(d)クラウン角度が浅い石は、ブリリアントとディスパーションが減少する
(e)フィニッシュは、最終製品に施したカッターの技量の程度を評価する


答え d


9.ダイヤモンドとその鑑定書が離れ離れになったとき、カラット重量と寸法の他に石の同一性を確かめる情報として信頼度の高いものを一つ選べ
(a)カラー・グレードやクラリティ・グレード
(b)ガードル厚さやキューレットサイズ
(c)クラリティ特徴の記号による図示
(d)クラウン角度やパビリオンの深さ%
(e)シンメトリーとポリッシュの評価


答え c


10.ダイヤモンド加工に関わる説明で誤っているものを一つ選べ
(a)円形ガードルの初期のブリリアント・カットはオールド・マイン・カットである
(b)シングル・カットのダイヤモンドのファセット数は17である。
(c)研磨石の大きさや形状は、原石の形状に左右される
(d)加工の際、原石を保持する器具はドップとダングである
(e)クリービングのために原石に施す刻み目をカーフという


答え a
オールド・ヨーロピアン・カット


11.宝石鉱物ができた場所を示した記述に合う宝石を記せ
(a)地下深部のマントル層
(b)ペグマタイト中
(c)地表または地表近く
(d)広域または接触変成作用


答え aダイヤモンド  bキャッツアイ、トパーズ  cオパール アメシスト  dひすい輝石 サファイヤ タンザナイト ネフライト
ペグマタイトは火成岩
ペグマタイト


12.カボジョン・カットに適する宝石鉱物原石が取れやすい地質学的の条件を2つ選べ
(a)地球深部のマグマ中で成長する
(b)地表または地表近くの条件下で成長する
(c)ペグマタイト中で成長する
(d)鉱脈中で成長する
(e)堆積岩中で成長する


答え b e


13.当てはまる言葉を記せ
ジルコンは産出したときには、たいてい帯褐色~帯緑褐色半透明である。これは組成中にふくまれる(A)によって構造が壊され、点欠陥の密度が高くなっているからである。
これを加熱すると点欠陥密度が減り、無色、淡青色などになる。逆に(B)を当て、点欠陥の密度を高めて意図的に着色させるものもある。ダイヤモンド、(C)などはその例である。


答え A放射線元素  B放射線  Cアメシスト


14.ダイヤモンドについて次の記述のうち、誤っているものを3つ選べ
(a)ダイヤモンドは炭素間の共有結合だけでできている結晶である
(b)ダイヤモンド中に含まれる不純物で最も多いものは窒素で、ケーブ系の色の原因になる
(c)ダイヤモンドは地球上でもっとも硬い鉱物で、叩いても割ることができない
(d)ダイヤモンドは漂砂鉱床中でしか発見されない
(e)合成ダイヤモンドはサイズが小さく宝石用には使えない
(f)放射線を当てると、ダイヤモンドの色を変えることができる。


答え c d e
一次鉱床でも発見される
30カラットを超える大粒ダイヤモンドの合成も成功している   
 
  
  


15.等軸晶系に属する宝石鉱物を二つ挙げなさい。


答え ダイヤモンド ガーネット


16.自色宝石を一つ挙げなさい


答え トルコ石



17.遷移元素の説明として正しいものを選べ
(a)結晶の中で熱などにより移動しやすい元素
(b)時間の経過とともに性質の変わる元素
(c)他の元素と反応しやすい元素
(d)熱などを与えると蒸発しやすい元素
(e)内側の殻に不対電子のある元素


答え e

   
 
  
  
18.単屈折性を示す単結晶の宝石はどの結晶系に属すか


答え 立方晶系


19.対応する合成宝石がフラックス法で合成されて市場に流通している宝石を挙げよ


答え ルビー
高温溶液法ともいう。エメラルド、ルビー、スピネル、サファイヤ


20.ある宝石の比重を静水重量法で測定したところ、空気中重量が3.0g 水中重量が10.9ctであった。この宝石の比重を求めなさい


答え 3.66
比重=空気中の重量/空気中の重量-水中の重量
3/(3-10.9*0.2)=3/(3-2.18)=3/0.82=300/82=3.66


2014年8月5日火曜日

3-3 貴金属のテクスチャーと石留め

①貴金属テクスチャーの表現

テクスチャーとはききんぞくへの表面処理、またはそれによって得られる貴金属の質感のことをいいます。

1.ワックス段階で施すテクスチャー
ワックスは軟らかいためテクスチャーをつけるのが簡単です。
ハードワックスの時は、主に彫刻刀やスパチュラーなど鋭利な工具を用い、
ソフトワックスの時は、けがきや針、竹串など多様なものが使えます。

2.貴金属段階で施すテクスチャー
貴金属を鋳造してからテクスチャーを付けることもあります。
また直接貴金属に加工してジュエリーを作る場合は、貴金属の上にテクスチャーをつけることになります。
代表的なものに金剛砂を用いた「梨地」やこれを機械化した「ホーニング」があります。

3.ダイレクトキャスティングによるテクスチャー
紙や布地、レース地、木の葉などを溶かしたワックスに浸し、それ自体を原型として貴金属に置き換える方法です。


市販で見られるテクスチャー表現は以下の通りです。
1.梨地 マット
貴金属の表面に微細な傷をまんべんなくつけて曇らせること

2.すじ目、ヘアーライン、サティーナ(サテン仕上げ)
細かな一定方向に線が入る仕上げのことです。

3.つち目、ハンマー
槌で打った後の模様をつち目またはハンマー仕上げと言います。

4.引き目
微妙に変化する筋が並んでいる「みつろう」による筋状テクスチャーのことです。
「みつろう」は日本古来のワックスで、手で温めながら引いてできる筋で、これを鋳造して金属に置き換えます。

5.溶かし
金属が溶けた感じに見えます

6.木肌、岩肌
がさがさとした深めの不均等な荒しを木肌とか岩肌と呼んでいます。

7.皮革
蛇、ワニなどの革模様をワックスに施したテクスチャー

8.粒金
表面に小粒の地金の玉をつけて多彩な模様にしたテクスチャー
エキゾチックな雰囲気となります。

②「彫り留め」と「爪留め」の違い

「彫り留め」
たがねを使って貴金属面に数ヶ所掘り起こし、その部分を爪としてメレ・ダイヤ等を留めます。

「爪留め」
爪と呼ばれる小さな棒状の貴金属地金を、石留めやっとこでたおして宝石を固定します。

3-2 ジュエリーの製造と修理

①チェーン製造方法

1.マシーン・チェーン

機械によって貴金属の線材などを自動的に製鎖加工することによって作るチェーンのことで、各種デザインがあります。
多くは丸線を編み上げて作ります。他に多角線、パイプ線などがあります。
編みあがった鎖をダイヤ・カットなどで表面を仕上げてネックレスとなります。

2.手作り・チェーン

ハンドメイドによるチェーンで、一味違った味わいのあるチェーンが多いです。
チェーンの輪に当たる部分やネックレスとして組み立てる工程の大半を手作業で行うチェーンのことです。

②サイズ直しの困難なケース

1.ピンクゴールドのサイズ直し
ピンクゴールドの問題点は、硬く、割れやすい点です。作業は慎重に行う必要があります。
(1)リング全体を赤熱するまで加熱する。ただし急激に加熱するとリングが変形するため徐々に加熱する
(2)赤熱後、一呼吸置いてリングが褐色になったら水に入れ(急冷)焼きなおす。
(3)リングの腕に加工を加え、もう一度焼きなます(加工硬化による割れをふせぐため)
(4)適切なろう材でロウ付けする。
(5)加熱によりできた黒い酸化被膜を酸洗い液で処理する
(6)やや黄色く変色した個所をバフなどで一皮剥く

2.ふくりん留めで石が入っているシルバー・ジュエリーのサイズ直し

3.3番以上のサイズ直し

4.リングの肩部より下の方までメレ・ダイヤモンドが埋め込まれているリングのサイズ直し

5.入りがリングの腕にはさみこまれているようにセットされているリングのサイズ直し

3-1 ジュエリーデザイン

①ジュエリーのアイディアのヒント

心をひきつける何かを探すことが重要となります。
1.自然から

2.人工のものから

3.歴史上のものから
 国内外の歴史上の工芸品や絵画、彫刻など

4.シンボルから
 太陽や月、星等の自然界のものや、家紋、国旗など

②ジュエリー・デザインの条件

ジュエリーデザイン画はどんなに美しくても、ジュエリーを完成させるためのプロセスにすぎません。
1.装着性を考慮する
ジュエリーは身につけるものなので、装った時のことを考えてデザインする

2.制作可能なこと

3.耐久性やコスト

③ジュエリー・デザイン画の図面

1.デザイン画は原則として実寸で描く

2.一部を簡略化して書くこともある。
 極端に細かい場面などは省略してもよい

3.各図面の呼び名
・上面図 真上から描いた図
・正面図 真正面から描いた図
・側面図 真横から描いた図
・立体図 立体的に描いた完成予定図

4.光は左上から当たってることを想定すること
 

2-6 宝石のウィーク・ポイント

宝石に与えるダメージ要因は大きく分けて物理的なものと化学的なものがあります。
大まかにいえば、物理的要因はほうせきのう物理的性質との関連、つまり結晶構造との関連で宝石にダメージを与えるか否かが決まります。
化学的要因は宝石の化学的性質つまり化学組成との関連で作用します。

宝石に与えるダメージ要因

1.物理的要因

(1)力
壁開、ピッカースないしプリネル硬度、モース硬度という物理的性質と関連しています。
ダイヤモンド、トパーズのようにモース硬度が高くても、完全な壁開を持っているものもあります。

(2)電気と磁気
電気・磁気による直接的な影響はないが、それらにより発生した熱による影響は考慮する必要があります。
電磁波の一種である光は、宝石の色に変化を与える可能性があります。
有機染料については可視光においても褪色の危険性があります。

(3)熱
熱により膨張し、堆積が増加することにより、例えば宝石が固定されていれば、その部分に力が加わることになります。
また一般的に化学反応は温度が高いほど進行するため、他の物質との共存におおきな影響を与えます。

(4)放射線
多くの宝石は放射線で色が変化します。
ダイヤモンドの放射線着色、トパーズの青色など人工的に放射線を照射して色を変えている例は多く存在します。

2.化学的要因

(1)酸
酸は多くの宝石と反応します。
特に生物起源の宝石、炭酸塩の宝石(カルサイト、アラゴナイト、ロードクロサイト、アズライトなど)、硫酸塩や燐酸塩の宝石(アラバスタ、アパタイト、トルコ石)は要注意です。
酸には強酸から弱酸までさまざまな酸があります。
日常では硫酸はバッテリー液などに、塩酸はトイレの洗浄剤に使われています。食用の酢はほとんどが酢酸であるし、マヨネーズやドレッシングには酢が入っています。
汗の主成分は塩化ナトリウムの水溶液であるが、微量の乳酸、脂肪酸を含みます。

(2)アルカリ
アルカリは一般的に有機物を溶かすので、有機質宝石はダメージを受けます。
日用品には石鹸、排水管洗浄剤などがあります。

(3)水
純粋な水は宝石と反応することはないが、有機物は多少溶解するので、生物起源の宝石は水中に長時間つけることは好ましくありません。
また水道水は塩素で消毒されており、井戸水はや酸性であるなどそれぞれの成分を考慮する必要があります。

(4)塩素
漂白作用があるので、生物起源の宝石、マラカイト、トルコ石、ラピスラズリなどは変色の恐れがあります。

(5)硫黄
塩素ほどではないが、漂白作用があります。銀とはすぐに反応し黒変させるので、銀を含む貴金属は避けなければなりません。
温泉だけでなく空気中にも含まれるため、ゆっくりと黒変していきます。

(6)溶剤
一般的に有機物質を素早く溶解します。
また、油、樹脂を溶かすものもあるため、透明液で含浸されたエメラルド、ジェイダイトも変色します。
アルコール、シンナー、エーテル、ベンジン、ガソリンなどさまざまなものがあります。
身近なものとしては、香水、ヘアスプレー、化粧品、除光液、接着剤などが該当します。

(7)油脂
有機質をわずかに溶かすため、有機宝石は避ける必要があります。
油脂が酸化するなどして変色する恐れもあります。
身近なものとしては、クリーム状の化粧品、食用油、マーガリン、ドレッシング、人から出る油などがあります。

(8)液体
マラカイト、トルコ石のような多孔質の宝石、めのう、ジェイタイトのような潜晶質あるいは多結晶の宝石、さらにはエメラルドのようにクラック(裂け目)の多い宝石は溶液物質が付着して浸透しないように注意する必要があります。

 

2-5 貴金属

①合金の状態図

状態図とは例えば組成(合金の割合)と湿度の関係で、液体状態になるか、固体状態ではどのような相(結晶)ができるかなどを示した図です。
適切な加工方法を判断する材料となります。

②金-銅合金の加工

高温域では全ての割合で固溶体(広い成分範囲にわたって同じ結晶構造を持つ固体状態)を作るが、中温域ではCuAuやCu3Au等の金属化合物(硬くてもろい性質をもつ)ができます。
赤金やピンクゴールドの加工を難しくしているのがこの金属化合物の生成のためです。
金属化合物が生成しないように、熱処理する場合は急冷することが必要となり、金750‰、銅250‰の赤金を700℃から急冷したものは組織も均一な固溶体になります。

③ISO規格「ジュエリー用貴金属の純度」

金合金:375 585 750 916
プラチナ合金:850 900 950
パラジウム合金:500 950
銀合金:800 (835) 925

④貴金属合金の非破壊鑑定

1.試金石方法(タッチストーン法)

試金石に鑑定する合金をこすりつけ、その条痕(粉末の時の色)の「色合い」や「酸との反応」を観察し、その状況を標準試料と比較しながら品位を判定する方法です。

2.蛍光X線分析方法

照射されたX線により励起された原子が、元素固有の特性X線すなわち蛍光X線を放出する現象を利用し、試料に含まれる元素の種類や含有率を測定する方法です。
めっきされた試料では誤った品位差を得るおそれもあります。

⑤金現物価格の指標となる市場

ロンドン、ニューヨーク、東京、香港、チューリッヒは5大市場と呼ばれています。
金現物価格はロンドンにて担当の貴金属商がオンラインを利用し貴金属の売買価格を決めています。
その価格は業者間の指標として働き、ニューヨーク市場に引き継がれます。
NY市場は先物取引が主体の市場で、その時点から数カ月先の金価格を予想した取引が行われています。次に開く主要都市である東京は現物、先物両者が混合した市場となっています。
この後、香港、チューリッヒ、ロンドンへと取引は流れていきます。

⑥金取引に使用される重量単位

取引に使われる重量単位は
トロイオンスでtoz(1toz=31.1035g)と表記されます。

⑦産金コスト

1990年代は1オンス(1oz=28.3495)あたり200ドル前後であったが、近年ではこれに加えて、鉱山労働者の待遇、環境保全、インフラコストなどが加わり増加傾向にあります。
これに対比した金価格がコストを上回るかでこうざんの稼働に影響があったが、2000年以降国際的な金価格の急増は生産コストを大幅に超える状況が続き、経営的には余裕が出てきています。

⑧世界のプラチナ供給量

2010年の世界供給量を金、プラチナで比較してみると、金が4,334トン、プラチナは194トンとプラチナは金の4.5%に過ぎません。
この市場の小ささが需要動向や投資資金の動きに敏感に反応し、価格変動は激しいです。

⑨銀需要の3大シェア

銀需要の用途としては2010年を比較すると、エレクトロニクスを含む産業用が15,670トン、フィルム用は減少傾向にあり2,337トン、銀器も減少傾向にあり1,617トン、コイン・メダルは3,257トン、正味投資退蔵は増加し5,723トンとなっています。

2-4 真珠

真珠とは生きた貝の体内で形成される代謝生産物であって、かつその外観しえる部分の構成物質が貝殻と等質であるものをいいます。

①天然真珠 養殖真珠 人工真珠

1.天然真珠

生きた貝の体内で人為的な介在を含まず形成された真珠です。
 ヨーロッパ、アメリカなどでは市場のほとんどが天然真珠です。養殖は養殖であることを明記する必要があります。
 古くは紀元前の時代から、日本では奈良時代から愛されています。
日本に現存している奈良時代の天然真珠は大半がアコヤ真珠、一部にアワビ真珠が含まれています。
 天然真珠の産地として最も有名なのが、バーレーンを中心とするペルシャ湾です。
良質のアコヤガイが大量に生息する地域です。ここで採取された地域は「オリエント・パール」として広く世界、特にヨーロッパで珍重されました。
 アメリカ大陸では、1492年にコロンブスによるアメリカ大陸発見以来、カリフォルニア半島先端のラパスを中心として大規模な天然真珠の採取が行われ、ここで採取された真珠はスペインを始め、ヨーロッパの王族へと送られました。
また、1857年ニュージャージーで発見された淡水真珠がティファニーに高値で買い取られました。
 現在市場に出ている天然真珠で最も顕著なものはコンク真珠です。
コンク真珠を産出するのはピンク貝という大型の巻貝です。コンク真珠は通常の真珠とは構造が異なります。
通常の真珠の構造は、アラゴナイトとよばれる炭酸カルシウムの結晶とコンキオリンと呼ばれる有機基質の層状構造をなしています。
コンク真珠の構造は、交差板構造をしており、厳密にいえば真珠ではなく、コンクパールとして通常の真珠と区別しなければならないです。 

2.養殖真珠

生きた貝の体内で人為的な介在により形成された真珠です。
その外観しうる表面全体が真珠層で覆われています。
 日本、オーストラリア、タヒチ、中国では市場のほとんどが養殖真珠です。
 中国では13世紀ごろには淡水産のカラス貝の中で鉛で作られた小片の仏像を貝殻と外套膜の間に挿入し、「仏像真珠」と呼ばれる半形真珠を作っていました。
 一方ヨーロッパでは、18世紀中ごろ、スウェーデンの科学者リンネもこの研究に取り組み、人工的に真珠を作り出す技法を考案したと言われています。
 養殖真珠の技法が完成されたのは日本です。明治26年(1893)の御木本幸吉の半円真珠発明に始まり、明治38年(1905)ごろには真円真珠を作る技術は完成していました。
現在でも西川のピース式(ピースと呼ばれる外套膜外面状皮細胞の小片を、貝殻を丸くした核に密着させて貝の体内に挿入する方法)が有核真円真珠を作る方法として受け継がれています。

3.人工真珠

生きた真珠貝の中で形成されることなく人工的に製造されたものです。
模造真珠の歴史は古く、特にヨーロッパでは13世紀から17世紀にかけ本物の真珠使用に禁令が出され、それを補うものとして作られました。
薄いガラス球を吹いて内側に魚鱗箔を塗って、内部の隙間を白蝋などで充填したり、あるいは真珠貝、ガラスなどで玉を作り、その表面に淡水産あるいは海水産の魚の鱗から抽出したグアニンを塗布したりして製造されていました。
最近ではガラス球または真珠養殖核の表面に異なった種類のプラスチックの被膜を何層にも重ね真珠光沢を出しています。

 

②養殖真珠の種類

養殖真珠は真珠形成の観点から3つに大別されます。

1.有核真珠

真珠養殖母貝の体内(主として生殖巣)に淡水産2枚貝から作られた「核」と「ピース」を入れ、核の表面に真珠層を形成させたものです。
核は一般的に球形であるが、ドロップやコインのような変形核も一部使用されます。
ほとんどのアコヤ養殖真珠、シロチョウ養殖真珠、クロチョウ養殖真珠はこれに該当します。

2.無核真珠

イケチョウガイ、ヒレイケチョウガイ(三角貝)などを用いた淡水養殖に多いです。
核を使用せずピースのみを予め外套膜に開けられたポケット状の穴に挿入し形成されます。

3.半形真珠

母貝貝殻内面真珠層にロウ石やプラスチックで作られた半形状の核を接着剤で接着し、この表面に真珠質を分泌させて作ります。
マベ養殖半形真珠が有名です。
半円真珠は真円真珠を半分にカットしたものとして半形真珠とは区別されます。半分真珠の形なので半形真珠と呼ばれます。

 

③真珠の加工処理

真珠は採取されると、研磨、孔明、削り、漂白、染色、熱処理などの加工が施されます。
加熱は余分な色素の除去や光沢の改良のため行われます。
漂白は酸化剤などによる有機物(シミ)、色素の除去のため行われます。
調色は赤色系色素添加によるきわめて軽度の色調改善を目的に行われます。
染色は天然または合成染料による真珠本来の色の改良または改変のために行われます。
着色は染料以外の化学薬品による色の改良または改変のために行われます。
放射線照射は色の改良または改変のために行われます。

④真珠の品質決定要因

真珠の品質特性は形、巻き、キズ、テリ、色です。
1.形
真珠層の厚さを考慮する必要があります。真球度の高さだけでなく、シロチョウ養殖真珠では左右対称の形の良いドロップ真珠はその希少性からトップクオリティの範疇にいれるべきとの主張があります。また、淡水養殖真珠の場合は丸に近ければ近いほど値段は高く、極めて明確な評価がなされています。

2.巻き
巻きとは真珠層の厚さです。
真珠層がどのような構造をしているかで、耐久性、光沢、色にまで影響を及ぼします。
母貝別の巻きの程度は
淡水養殖真珠<シロチョウ養殖真珠・クロチョウ養殖真珠<アコヤ養殖真珠となります。
巻き優劣の比較は母貝別に行います。異種の比較は困難です。
アコヤ養殖真珠の場合は下限0.3mmくらいが商品として流通する目安となっています。
確認方法としては、熟練者の目視確認や軟X線、超音波などの装置を利用することもあります。

3.キズ
キズは真珠表面または内部の円滑さを阻害し、真珠の美しさを損なう原因となります。
キズの数、大きさ、位置、種類などが判断基準にとって重要になります。
一般的にキズナシ 小キズ 中キズ 大キズに分けられるのですが、評価者によって多少ずれがあります。
・引っ掻きキズ
かなり目立つものが多いです。
・凹みキズ
程度により「エクボ」「ピン・ホール」など呼ばれます。
・でっぱりキズ
さまざまな種類があります。著しい場合は真珠の形そのものに影響を与えます。
・フラット・キズ
真珠の表面に発生した細かい凹状のキズです。
・シワ
著しい場合はミミズバレのように見えます。

4.テリ(光沢)
真珠層が厚く、層を構成するアラゴナイト結晶板が大きくてきれいな結晶で、規則正しく積み重なり、内部にシミなどの有機物を包含しない場合、真珠独特のテリが生じます。
テリは評価する環境、特に光源に大きく左右されるので注意が必要です。

5.色
色は真珠品質決定要因の中で最も難しいです。
それは光の反射、屈折、干渉、真珠の持つ色素、有機物、加工処理などの多様な要因があるためです。
統一した基準はなく、業者は独自の基準で評価を行います。
使う人の好みや流行に大きく左右されるため、需要の少ないものは低ランクとされます。

⑤真珠の品質を変化させる要因

真珠は様々な要因で真珠の品質特性を変化させます。
1.酸
真珠の主成分である炭酸カルシウムは酸で溶解します。
直接酸と接触しなくとも、真珠中に含まれる水分が空気中の二酸化炭素や窒素酸化物を吸収して酸になる場合もありますし、私たちの汗にも酸性のmののがあります。

2.光
光のうち、短い紫外線および熱源に近い長波長の赤外線は特性を変化させます。
紫外線により、真珠中の色素、染料などは変色、退色します。またコンキオリン蛋白も黄変し、その結果真珠も黄変します。
赤外線により、黒真珠や淡水真珠の色素は脱色されるため、直射日光、強い照明などは避けることが好ましいです。

3.熱
徐々に加熱した場合は100℃までそれほど大きな変化は起こらないが、急激な温度変化は真珠層の部分的膨張、水分蒸発などを起こし、層状構造に断層や亀裂を生じさせ、真珠層の「われ」の原因になります。
またコンキオリンも熱の影響を受け、黄変などの変色を起こします。
クロチョウ養殖真珠の黒色色素、淡水養殖真珠のオレンジや紫色の色素も光同様に熱で変色・退色します。特に淡水真珠は120℃くらいの加熱でいちじるしく脱色されるので、加工処理方法のい一つとして利用されます。

4.酸素
真珠は空気中の酸素によって徐々に酸化されます。
真珠中の「シミ」と呼ばれる有機物は酸化され退色しやすいです。ブルー系のアコヤ真珠の退色はこのシミの退色が主原因です。

5.水分
炭酸カルシウムの結晶が浸食され、光沢も失われます。これは主に水が空気中の炭酸ガスを吸収して炭酸になり、真珠のカルシウムを溶解するためです。
また水道水には塩素系の殺菌剤が含まれていたり、雨の場合には酸性雨など水分単独でなく他の物質と化合して複合的に真珠を変化させることが多いです。

⑥貝殻製品、真珠様物質の鑑別

1.貝殻製品の鑑別

貝殻を球状あるいは半球状にして、真珠に似せているものが存在します。
軟X線透視で貝殻特有の仕切りが移るので簡単に鑑別できます。
また貝殻から球体を切り出すと、球体の表面に真珠層部の表面と断面が見られます。
これら固有の模様は光学顕微鏡で全表面を丁寧に観察しても確認できます。

2.真珠様物質の鑑別

カキ、アサリ、シジミ、シャコガイなどから稀に見つかる真珠が存在します。
その大半は真珠光沢を示しません。
ルーペなどで全表面を拡大観察し、その構造特有の模様を観察します。様々な角度から照明を当てて模様を観察することが大切です。
軟X線透視で内部状況を観察したり、表層部の元素分析を行ったり、天然のものか否かを鑑別することもできます。
その他分光反射スペクトル測定、蛍光分光反射スペクトル測定などを行って、産出貝の同定などをする場合もあります。

⑦ブルー系真珠の鑑別

ブルー系真珠とは真珠内部の異質層の色が真珠層越しに透けて見える真珠の総称です。
人気商品の一つのため、染料を真珠内部に浸透させたり、放射線など電磁波を照射し、内部の核を褐色に変色させるなどの加工処理が施されることも多いです。
この種の加工処理されたブルー系真珠は、
内部の異質層の確認(軟X線による確認や強い光のビームを当て目視確認)
浸透染料の確認(光透過法や分光反射スペクトル測定)
核の黒褐色化の確認(光透過法)
が処理識別の着眼点です。

⑧貝殻鑑別とは

母貝鑑別とは真珠そのものから産出貝を判定することです。
それぞれの産出貝の貝殻真珠層の物理的・化学的特性を把握し、その特性が該当真珠に表れているかを確認することが基本です。

⑨表面状態から品質検査

1.キズ
養殖過程でできるもの、加工過程でできるもの、着用時に硬いものと接触してできるものがあります。
養殖過程でできるキズは突起と窪みタイプに分けられます。とりわけ異質層の稜柱層にみられることが多いです。
接触キズは全て窪みタイプです。顕微鏡拡大で容易に判別できます。

2.露出綾柱層
低級品の真珠に稀に綾柱層が露出している場合があります。これは養殖過程できるのですが、乾燥でひび、われが比較的早い時期に起こり、結果的にその真珠全体の崩壊をうながす原因になります。

3.ハンマー・マーク
よく見ると真珠表面をハンマーで叩いたかのような面が波立っています。養殖過程でできたものです。

4.あれ(ぼけ)珠
真珠層表面の光沢が鈍く、粉をふいたように見えるものをこう呼びます。
これは表面に微小な凹凸が多数存在することによる光の散乱に起因します。
これは真珠層を構成する炭酸カルシウムの部分的溶解によります。
強い光の下で鮮明に確認できます。 

⑩内面状態から品質検査

1.巻き
真珠層の厚さが0.25mm以下のウス巻きのチェックを行います。品質面上で経時変化が非常に早く、品質保証の点で問題を生じかねないためです。
軟X線透視測定や直射日光・光透過法なっで核の縞模様確認する方法も可能です。真珠層の厚さが0.3mm未満であると核が透けて見えるのです。

2.加工キズ
加工時、とりわけ漂白工程で真珠層が劣化した場合、加工キズとしてあらわれます。
劣化は真珠層内部に極小空隙の発生を伴うため、そこで光の散乱で白く見えるのが特徴です。
肉眼でも十分に確認できますし、光透過法の方がより鮮明に見えます。

3.層われ
乾燥や乾燥・湿潤の繰り返しで起こる真珠層のわれを指します。
巻きの厚い真珠に起こりがちです。肉眼では見えにくいため、光透過法での検査が必要です。

4.核われ
真珠内部の核が割れ、それが真珠層越しに透けて見える状態を核われ珠とよびます。
直射日光や光透過法で鮮明に見えます。

⑪真珠のクレーム処理

1.光沢鈍化
汗、皮膚分泌、化粧品等の水気で真珠層の表面が溶けたために起こる現象です。
着用後は拭いてからしまうのが真珠手入れの鉄則です。
ほとんどの場合は炭酸カルシウムの結晶を数層はがすと修復されます。研磨剤を混入した市販のクロスで表面をこするなどして修復することができます。

2.変色
変色のほとんどは黄ばみで、全体に黄褐色化することです。
これは熱や光などで真珠層の蛋白質が変性し黄変化するために起こる現象です。
黄ばみの修復は困難を極めます。

3.褪色
色が褪めて(あせて)しまうことです。
一つはアコヤ養殖真珠の加工で使われる染料の褪色です。光によって褪色します。
加工で使用する染料を光に強いものを使用することがクレーム対策となります。
二つ目はブルー系真珠の褪色で、発色の原因でもある異質層の乾燥で収縮し、空気の層ができることにより、光が散乱し異質層の色が反射して外に出てくるのを防いでしまうためです。
事前に乾燥させ、異質層の水分を除去しておくことがクレーム対策につながります。
三つ目は淡水養殖真珠の褪色で、蛋白質に含有している色素が熱によって薄くなる現象です。
事前に加熱し、十分に褪色させておくことがクレーム予防につながります。

2014年8月4日月曜日

2-3 カラーストーン

①宝石の色

宝石の色は物体の色で、宝石に光があたっておこる反応を、人間の目が知覚して色を判断します。
白色光が宝石の中を通過する際、全ての波長を透過すればそのほうせきは無色として見えます。
全ての波長を反射すれば白色に、そして全ての波長を吸収すれば黒色に見えます。
また全ての波長にわたり可視光が等量吸収されると灰色に見えます。
これらが無彩色のグループであり、有彩色の場合は特定の波長が吸収され、残りの波長は透過あるいは反射されます。このような選択吸収が起こると、残りの透過・反射された光が宝石の色として現れます。
以上は白色光の場合ですが、光源の波長成分が異なると、宝石の色は違って見えます。
物体色を決定する光源の性質を演色性と呼びます。したがって色を比較するためには標準光源が必要となります。
また、カラーバリエティが豊富な宝石種の色相におけるカラーボーダーが問題となることがあります。
有彩色を客観的に判断するためには、色の3属性(色相 明度 彩度)を十分に理解しておくことは基本です。
これは色を定性的に表現するうえでも同じです。「色相に関する装飾語+明度、彩度に関する装飾語+基本色名」の形で表現されます。
例えば色相に関しては「帯赤の 帯黄の 帯青の 帯紫の 」
明度・彩度に関しては「冴えた 明るい 強い 濃い 浅い 鈍い 暗い 淡い 明るい灰色味の 灰色味の 暗い灰色味の」
基本色名は「赤色 橙色 黄色 黄緑色 緑色 青緑色 青色 青紫色 紫色 赤紫色」

②宝石の着色原因

物質によって光の吸収が起こるのは、物質中の電子が光のエネルギーの一部を吸収し、吸収されなかった波長が透過するからです。
a,遷移元素
宝石の最も代表的な着色原因は、8種類の遷移元素が宝石の主成分あるいは微量成分として含まれていることによります。
普通電子殻には電子が二つ対になって入っているのだが、遷移元素には電子が一つしか入っていない電子殻が内側に存在します。(不対電子)この状態は電子がより高いエネルギー準位に移動(隣の電子殻に移動すること=励起状態)しやすく、励起する際にエネルギーを吸収します。
その時に吸収されるエネルギーと可視光の波長はよく一致するため、色の原因となりやすいのです。
なお、このエネルギー量は結晶構造によって異なるため、不純物クロムがコランダムではルビーの赤色に、ベリルではエメラルドの緑色の原因となります。

b.電荷移動
実際の電子は隣り合ったイオン間で移動します。この移動に必要なエネルギーに相当する波長が吸収されると残留色が現れます。
ブルー・サファイヤでは、主成分のAlの一部を、不純物のFeとTiが置換すると、FeとTiとの間で電荷移動が起こり、青色が現れます。

c.着色中心
宝石の多くは結晶で固有の結晶構造を持っています。現実の結晶の中では原子の並びに狂いが生じています。これを格子欠陥と呼びます。
色の原因となるのは点状の格子欠陥です。
結晶は放射線照射を受けると格子の一部が壊され、点欠陥が新しく生まれその結果着色中心がでいて着色します。この色は光や熱によって着色中心の状態が変化すると消えるが、安定度は宝石種によって異なります。

d.禁止帯幅着色
半導体では電子が自由に動ける帯(価電子体、伝導体)と動けない体(禁止帯)の間のエネルギー差が小さく、自由電子と個々の原子に所属する電子が共存する状態となる。
例えばダイヤモンドは純粋であれば無色だが、B(ホウ素)が微量に含有されるとIIb型のブルーとなります。

e.有色インクルージョンの存在
もともとのボディーカラーではなく、高密度で含まれたインクルージョンの色が宝石の見かけの色として見えるものもあります。

 

③ガーネットの様々な宝石変種

日本でも人気の宝石ガーネット。
「ガーネット」とは同一結晶構造を示す一連の鉱物グループの名称です。
このグループには色も外観も全く異なり、ジュエリー素材として一般的に用いられている多彩な宝石変種があります。

・無色石
人造石(YAG、GGG)
ホワイト・グロッシャー・ガーネット

・赤色石
MgとFeが主成分として含まれるが、両者の割合は個体ごとに異なっています。
組成比の違いによって3つの変種グループに分けられます。
Feの増加に従い、屈折率と比重が比例的に高くなるので特性値を基に分類されます。
1.パイロープ・ガーネット
Mgを優勢とする
Feが少なく不純元素として含まれたCrが色の主因となるため美しい血赤色を示します。
Feが多くなるに従い、やや暗赤色となります。
2.ロードライト・ガーネット
中間的
紫色を帯びたしゃくなげの赤色であるが、血赤色や暗赤色のものも見られます。
最もポピュラーなガーネットの変種
3.アルマンティン・ガーネット
Feを優勢とする
ワインレッドの色。
Feに起因する自色のため、大きなサイズではやや暗色になりがちで、昔からカボジョン・カットの底部をくりぬいて石を薄くして明るく仕上げる「カーバンクル」と呼ばれるカッティングスタイルが考案されました。

・ピンク色石
半透明の「ピンク・ハイドロクロッシュラー・ガーネット」
ほとんどが黒色粒状のマグネタイト・インクルージョンの点在が特徴

・橙色石
1.スペンサルティン・ガーネット
ほとんど純粋なMnによる自色の明るい橙色で「マンダリン・ガーネット」のコマーシャルネームを持ちます。
2.ヘソナイト・ガーネット
澄んだ橙色からFeを含むやや暗い橙赤色
オイリーな外観を見せる糖蜜状組織と丸みを帯びたアバタイトの小さな結晶の点在が特徴
3.オレンジ・グロッシュラー・ガーネット
ヘソナイトのような内部特徴を示さず、澄んだ透明な印象

・黄色石
グロッシュラー・ガーネットとヘソナイト・ガーネットには帯緑黄色のイエローから褐黄色のゴールデンまでの変種が見られます。
1.アンドラダイト・ガーネット
大きな分散度をもち、明瞭なファイヤを示すのが特徴

・緑色透明石
1.グリーン・グロッシュラー・ガーネット
1967年に発見されたのは黄緑色のバラエティであったが、Vを含む美しいエメラルド様の緑色の原石が発見され、その産地ケニアのツァボ国立公園にちなんで「ツァボライト」と名付けられ定着しています。
2.デマントイド・ガーネット
希少性のため高い評価をされています。
明瞭なファイヤとホーステール・インクルージョンで知られ、コレクターストーンと言われていました。
FeよりCrが優勢
3.アンドラダイト・ガーネット
Feによるやや暗緑色あるいは褐緑色

・緑色半透明石
 ハイドログロッシュラー・ガーネット
通常は黒色粒状のマグネタイト・インクルージョンの点在が特徴であるが、これらを含有しない均一な緑色石は特に良質のジェイダイドに似ています。

・青色石
なし

・紫色石
なし

・褐色石
なし

・白色石
なし

・灰色石
なし

・黒色石
なし

 

④ひすい

緑色半透明の宝石
ジェイタイドと呼ばれる鉱物
輝石族という広く個溶体を形成する鉱物グループ中の一変種(他:スポジュメン エンスタタイト ダイオサプサイトなど)
均一でごく緻密な組織のジェイタイドは俗に「ろうかん」と称される高い透明度を示すが、
逆に荒く不均一なジェイタイドは透明度も低くなります。
本来は無色のワックスを使った表面光沢の仕上げは透明感のあるジェイタイドにはほとんど不要で、逆に後者のようなジェイタイドには効果が高いです。
一方、後者のジェイタイドに硬化樹脂を「含浸」する処理は、石をもろくさせるうえ、本来の透明度を改変させることになり、商取引では容認されていません。この処理には近年、無色のみでなく有色の樹脂も使われています。
色はCrに起因します。

⑤宝石に見られる光学効果

1.アステリズム(星彩効果)
スター・ルビーやスター・サファイヤで知られる効果です。
結晶方位に規制された2方向ないし3方向に発達した針状結晶からの反射に起因するもので、同様に条件が備われば他の鉱物にも出現します。
カボジョン・カットが必須です。
天然のスター石には意外に黒色や褐色の変種が多いですが、これらのほとんどは暗色の針状結晶の含有が、アステリズムとボディ・カラーの原因です。

2.シャトヤンシー
猫の目にたとえられる針状結晶やチューブ状インクルージョンそして成長組織などが平行に発達した石カボジョン・カットしたときに見られるものです。
キャッツ・アイと言えばクリソベリル・キャッツ・アイと思われがちであるが、天然、人造、模造問わず多種にわたり存在しています。

3.カラーチェンジ・タイプ
自然光下と人工光下で色調が異なってみる変色性
主としてCrやV(バナジウム)の含有によっています。
これらの着色元素は、スペクトルの黄色部を吸収し、赤色と緑青色領域をほぼ等しく透過するので、この光学効果が生じます。
アレキサンドライトがその代表例ですが、そのほかにも変色性を示す鉱物はあります。
ここ数年でカラーチェンジ・タイプの天然石の人気が高まり、特にサファイヤ、ガーネット、スピネルは広く市場に流通しています。

 

⑥生物起源の宝石

真珠やさんご、こはくなど生物起源の宝石は数多く存在しています。
1.アイボリー
動物の歯や牙で加工に十分な大きさのもの
象牙のほとんどはアフリカ象のものであるが、近年ではワシントン条約の規制なども影響し化石象牙であるマンモスの牙も使われています。

2.べっ甲
タイマイなどのウミガメの背甲で主成分は蛋白質でできた瓦のように重なる13枚の甲です。
温めると軟化する熱可塑性があります。
熱湯に浸して上でブレスする加工だけで、さらに大きな面積や厚さを得ることができます。

3.ジェット
研磨により樹脂光沢の高い輝きが得られる黒色不透明な宝飾素材です。
松拍科の樹木が化石化したもので、石炭層から見つかります。
鳥肌のような特有の表面構造をしています。

4.シェル(貝殻)
伝統的なシェル・カメオには2種類の貝が使われます。
ピンク色の地には天然のコンクパールの母貝であるピンクガイ、そして褐色地にはヘルメットガイの、それぞれ白色層にレリーフ彫刻したものです。


2-2 ダイヤモンド③

⑨ダイヤモンドの様々な用語

1.ファインシー・シェイプ

ラウンド・ブリリアント・カット以外のカットの総称です。
通常、1個の原石から1個の製品が得られます。加工工程のほとんどが手作業になるため、労働コストが割高になります。
産出する割合の高い八面体系の結晶や十二面体系の結晶は、歩留まりと輝きの点で、
これをラウンド・ブリリアント・カットに仕立てることが最も有利です。
それに対し、平たな結晶や細長い結晶など大きな原石ん大半に見られる非常に不規則な形をした原石はファンシー・シェイプにカットされることが多く、古今の有名ブランドのスタイルのほとんどがファインシーシェイプです。

2.ボータイ

マーキーズ、ペア・シェイプ、オーバル、ハートなどの石には、テーブルの横幅方向にボータイ(蝶ネクタイ)効果と呼ばれる暗色部分が見られます。
これは縦と横の寸法の違いによる避けがたい現象です。暗さの程度はパビリオンの深さによって変化し、非常に暗い場合美しさに影響を与えるものとされています。

3.ネール・ヘッド

パビリオンの角度が適切な角度より深すぎるとテーブル全体が暗くみえます。
ダークセンターとも呼びます。
pavillion2.jpg

4.フィッシュ・アイ

パビリオンの角度が浅すぎてガードルの反射像がテーブルに内接して見える現象です。
中央部分が色抜けして見えます。
pabillion3.jpg
※画像は宝石研磨の世界より
http://nobucoltd.blog.fc2.com/blog-entry-178.html

5.レーザー・ソーイング

レーザー光線の高い熱エネルギーを利用してダイヤモンドを焼き切るので、結晶学的な硬さの方向(グレイン方向)を無視できることが最大の利点です。
アルファベットヘッドやホースヘッドなど様々なカットを仕立てることが可能になり、また切断時間も節約できるようになりました。
欠点としては装置が高いことと、切り取る際の重量ロスが大きいことです。

⑩ダイヤモンドの特性とカットの外観特徴

a.光学的特性
・屈折率:2.417
・分散:0.044
・光沢:金剛光沢
・透明度:特に優れている
・屈折性:単屈折
     ↓
<外観的特徴>
・輝きが強く、適度の分散が見られる
・石をひっくり返して、下にある文字が見えない
・拡大検査でファセットエッジが二重に見えない
・高屈折率の重液(屈折率:1.74)に着けても、ファセットエッジがよく見える

b.物理的特性
・比重:3.52
・モース硬度:10
・壁開性:(八面体面に平行に)4方向完全
・靱性:壁開方向では良好、一般方向では卓越
・熱伝導性:物質中最高
     ↓
<外観的特徴>
・鏡のような研磨面
・鋭いファセットエッジ
・フェザー(割れ)やベアデッド・ガードル(ガードル部分のひげ状の割れ)の発生原因
・割れ口が階段状
・熱慣性テスターでダイヤモンドを示す
・息をかけた時に曇りがすぐ消える

d.その他
・親油性
・蛍光性:一般的にブルー
・分光特性:415nmに吸収線
・X線反応(透明)

 

⑪ダイヤモンド鉱山

高産出金額国:ボツワナ、ロシア、南アフリカ、カナダ
多量産出国:ボツワナ、オーストラリア、ロシア、コンゴ民主共和国
高品質国:ナミビア、シエラレオーネ
低品質国:オーストラリア、コンゴ民主共和国

 

⑫オーストラリアのアーガイル鉱山

カラットベースではボツワナに続いて世界第2位の産出です。
年間産出は5.66億ドル(620億円)と比較的少ないが、カラットでは3,066万cts.と世界シェアの18.7%を占めています。
品質的には50%が工業用、45%がニアジェム(歪みが大きく、不純物も沢山混入してしまっているものの、宝飾用として何とか使えるかもしれないというような原石)、5%が宝石用です。
きわめて高価なピンク、ブルー、グリーン、イエロー、ブラウンなどファンシーカラーの原石も産出しており、アーガイル社が自社で研磨し、販売しています。

 

⑬デビアス社のサイトとは

デビアス社は世界最大のダイヤモンド鉱山会社です。その傘下にはボツワナ、南アフリカ、ナミビア、タンザニアの鉱山があり、世界産出の43%のダイヤモンドを産出しています。
 デビアス社は原石を集中蓄積し、市場状況を見ながら放出量を加減することでダイヤモンドの価格安定を図ってきました。
このシステムを具現化したのが「サイトsight」です。
これはDTC(Diamond Trading Co., Ltd.ダイヤモンド販売会社)が年10回(5週に1回)ロンドンで開催されています。
参加できるのは「サイトフォルダー」と呼ばれる指定研磨業者・原石ディーラです。
売り手が提示した商品を、買い手は「1見の機会」を与えられ、交渉することができない暗黙のルールで成り立っています。(サイトとは「見ること」を意味します)

 

⑭デビアス社の「シングル・チャネル・マーケティング」

市場の在庫状況を見ながら放出量を加減する単一販路政策です。

 

⑮日本のダイヤモンド輸入の下落

日本は前年比で3回ほど輸入が下落した年があります。
1980年の第2次石油危機
1990年のバブル景気破綻不況
1997年の2次平成不況

2007年現在の輸入額は1973年(30年前)と同レベルに戻りました。

 

⑯ダイヤモンドの伝統的な研磨地と新興研磨地

<伝統的な研磨地>

・ベルギー
16世紀ダイヤモンド研磨の町としてアントワープが黄金時代でした。
19世紀末にはコンゴより優先的にダイヤモンドを供給させる裏取引に成功し、世界一のカッティングセンターへと成長していきます。
しかし、1970年代に人件費の高騰に伴って、小粒のダイヤモンドは新興研磨地へと移行していきます。
2005年現在アントワープには約1,000人の研磨技術者がおり、1カラット以上の大粒で品質の良い原石を扱っています。研磨技術は非常に高いレベルにあり、世界最大の研磨ダイヤモンドのとレーティングセンターです。

・イスラエル
イスラエルは高いレベルの研磨技術を持ち、約2,000人が従事しています。
第2次世界大戦後1974年、建国と同時に入植したユダヤ人によって導入されたダイヤモンド産業はイスラエルの最大の輸出作業となりました。
ダイヤモンド研磨産業はテルアビブに集中しています。
研磨作業のコンピュータ化をいち早く取り入れ、1990年代に入ると最も活発な研磨地として発展しました。
しかし、1990年の日本のバブル崩壊はイスラエルに多大な影響を与えました。
2005年の主要な輸出先はアメリカ次いで中国の玄関口香港です。
現在はアントワープ同様、若者の業界離れや技術不足や高齢化が進んでいます。

・インド
金額べーすでは世界の研磨ダイヤモンドの生産の半分を超える55%、カラットベースでは70%のシェアを誇ります。
研磨産業の集中地はムンバイです。
従業者数は70万人から100万人とも言われ、その全体の5-7%を14歳以下の幼年労働者が占めています。
1980年当初の石油危機による世界不況により、インドの小粒ダイヤモンドの需要が増し、過去20年でインドのダイヤモンド産業は金額・量ともに5倍に拡大し、世界最大のカッティングセンターへ成長しました。
最近のインドの特性は安い労働力だけではなく、コンピューター制御による研磨装置使用により幅広い品質やサイズの生産ができるようになり、10ctsの大きさまで扱っています。

・アメリカ
1940年からナチスの迫害から逃れたユダヤ人によってダイヤモンド研磨技術が持ち込まれました。
研磨産業はニューヨークに集中しています。
研磨技術者は約400人で研磨技術のレベルは高く、人件費は世界で最も高いため2cts以上の高品質のものに限定されます。

<新興研磨地>

 ・アルメニア
1991年ソビエト連邦崩壊により、外国からダイヤモンド研磨技術を習得し急速に成長しました。
現在約3,000人を雇用し、小粒のダイヤモンドを研磨しています。人件費は比較的低いが、研磨技術は高いです。

・中国
人件費が安く、潤沢な労働力が特徴です。
1980年代にDTCからの原石供給というバックアップにより本格的に産業が開始されました。
従業員数はインドに次いで世界で2番目に多いです。
0.5ctsの高品質の原石を扱っており、その技術はインドより高く、カラット当たりの人件費はインドよりやや高いと言われています。

2-2 ダイヤモンド②

④オールド・ヨーロピアン・カットと最近のラウンド・ブリリアント・カット

ダイヤモンドは開発された器具を使うことで次第に中心から放射状に研磨面が対称的に数多く刻まれるようになり、ブリリアント・カットへと進化していきました。
18世紀初めにはブルーティング(ガードル部分の角を他のダイヤモンドで削って丸みを付ける共けずり)によってガードル輪郭を丸くして、合計58面体ファセットをつけた、オールド・ヨーロピアン・カットが登場します。ラウンド・ブリリアント・カットのルーツとなるカット方法です。
 このころのカットは八面体の結晶1個から1個の製品しか得ていませんでした。
南アフリカで多量のダイヤモンド供給がされるようになった1910年頃には、高速回転する刃にダイヤモンドを押し当て石を切断できるソーイング・マシーンが発明され、1個の原石から2個の製品を得ることができるようになり、相対的な歩留まりが向上し、加工能率も向上しました。
ただし、最高の美しさを発揮する石のプロポーションとされるトルコウスキー案のブリリアント・カットはソーイングにより切断したとしても大幅な歩留まり低下を生じます。
 オールド・ヨーロピアン・カットは今日のラウンド・ブリリアント・カット石と比較すると、テーブル面が小さく、キューレットが大きくて、全体の深さも相当深いものでした。
この種の加工に適する八面体の原石は非常に稀なので、歩留まり率を上げることが、カッターにとって最大の使命でもあったのです。
そのため今日のラウンド・ブリリアント・カット石と比較すると、石内部に入射した光の大半が
パビリオンから漏れ出て、輝きの少ない石が多かったのです。
光の内部反射や分散などを考慮した輝きの強いダイヤモンドが登場するのは20世紀になってからです。
 
※画像はダイヤモンドミュージアムより
http://www.cgl.co.jp/museum/f2/e2.html

⑤ダイヤモンド加工の特殊性

ダイヤモンドの加工はダイヤモンド固有の性質や希少性の高さのために色石加工とは比較にならない特殊な問題をいくつか抱えています。
1.硬さの克服
物質中もっとも硬いので、切ったり(ソーイング)、研磨したり(ポリッシィング)するにはダイヤモンドの粉末を使用するほかありません。
技術が進化した今日でも多大の時間と労力を必要とします。

2.グレイン(結晶内の硬い軟らかい方向)の選択
原石の形状にかかわらず、石の内部で最も軟らかい六面体面は最も一般的にソーイングに利用される面であり、次に軟らかい12体面体は最も一般的に研磨に利用される面です。
グレイン方向は常に意識して作業を行う必要があります。

3.輝きをもとめて
ファセット間の角度や比率、対称性に富んだファセット配列など金属加工にも匹敵する精密な孤高技術が求められます。

4.重量保持率(歩留まり)を上げる
輝きを優先させたデザインで加工すると、原石からの重量の目減りは最も多くなります。
最も普及しているラウンド・ブリリアント・カットに加工しても、八面体の原石の50%以上が失われてしまします。
最終的な重量変化が価格に大きな差をもたらすので、カラーやクラリティの潜在性を見極めたうえで、輝きも維持し、しかも経済効率のよいプロポーションの石に加工するのがカッターの使命です。

⑥ダイヤモンドの加工手順

1.デザイン案を練って原石にマーキング(ソーイングかクリービングの指示)
2.クリーピング
  壁開によって原石の形を整える作業
3.ソーイング(鋸引き)
  原石切断
4.ブルーティング(共ずり)
  ガードルを丸くする
5.ファセッティング(刻面)
  研磨してファセットを付ける作業。

⑦プロポーションとフィニッシュの分析要素

4C中の「カット」は研磨済みのダイヤモンドの「プロポーション」と「フィニッシュ」を指します。
プロポーションは研磨のファセットの角度、相対的な寸法や割合および両者の相互関係を表します。
フィニッシュは研磨の質やカットの正確さ、あるいは対称性を表します。
ダイヤモンドカッターは光の効果が最大限に発揮できるよう、適切なプロポーションを施して石内外の反射光量を増大させ、かつ均質な反射光にするために丁寧にフィニッシュを施します。

 

⑧光学的効果によるダイヤモンドの美しさ

パビリオンのメイン・ファセットは、入射光を2度にわたり全反射させる鏡のような働きをするので、
ダイヤモンドの角度の中では輝きに影響する最も重要な角度です。
ベゼル・ファセットの角度は主にパビリオンからきた光を分散させて外に出す、虹色のきらめきの程度に影響を与える角度です。
ダイヤモンドの外観に見られるブライトネス、ファイヤー、シンチレーションはダイヤモンドのオプティカル パフォーマンス(光学効果)と呼ばれ、見た目の美しさを官能評価する際の要素となります。
【ブライトネス】
「白色光」の内部および外部の反射の外観または程度を示します。
【ファイヤー】
スペクトルカラーに分散する光の外観または程度を示します。
【シンチレーション】
スパークル:ダイヤモンド、観察者または光源が移動するときにきらめく閃光部分の外観または程度を示します。
パターン:そのダイヤモンドが静止しているとき、または動いているときに見える、内部および外部に起因する明るい部分と暗い部分の相対的な大きさ、配置、コントラストを示します。