⑨ダイヤモンドの様々な用語
1.ファインシー・シェイプ
ラウンド・ブリリアント・カット以外のカットの総称です。通常、1個の原石から1個の製品が得られます。加工工程のほとんどが手作業になるため、労働コストが割高になります。
産出する割合の高い八面体系の結晶や十二面体系の結晶は、歩留まりと輝きの点で、
これをラウンド・ブリリアント・カットに仕立てることが最も有利です。
それに対し、平たな結晶や細長い結晶など大きな原石ん大半に見られる非常に不規則な形をした原石はファンシー・シェイプにカットされることが多く、古今の有名ブランドのスタイルのほとんどがファインシーシェイプです。
2.ボータイ
マーキーズ、ペア・シェイプ、オーバル、ハートなどの石には、テーブルの横幅方向にボータイ(蝶ネクタイ)効果と呼ばれる暗色部分が見られます。これは縦と横の寸法の違いによる避けがたい現象です。暗さの程度はパビリオンの深さによって変化し、非常に暗い場合美しさに影響を与えるものとされています。
3.ネール・ヘッド
パビリオンの角度が適切な角度より深すぎるとテーブル全体が暗くみえます。ダークセンターとも呼びます。

4.フィッシュ・アイ
パビリオンの角度が浅すぎてガードルの反射像がテーブルに内接して見える現象です。中央部分が色抜けして見えます。

※画像は宝石研磨の世界より
http://nobucoltd.blog.fc2.com/blog-entry-178.html
5.レーザー・ソーイング
レーザー光線の高い熱エネルギーを利用してダイヤモンドを焼き切るので、結晶学的な硬さの方向(グレイン方向)を無視できることが最大の利点です。アルファベットヘッドやホースヘッドなど様々なカットを仕立てることが可能になり、また切断時間も節約できるようになりました。
欠点としては装置が高いことと、切り取る際の重量ロスが大きいことです。
⑩ダイヤモンドの特性とカットの外観特徴
a.光学的特性・屈折率:2.417
・分散:0.044
・光沢:金剛光沢
・透明度:特に優れている
・屈折性:単屈折
↓
<外観的特徴>
・輝きが強く、適度の分散が見られる
・石をひっくり返して、下にある文字が見えない
・拡大検査でファセットエッジが二重に見えない
・高屈折率の重液(屈折率:1.74)に着けても、ファセットエッジがよく見える
b.物理的特性
・比重:3.52
・モース硬度:10
・壁開性:(八面体面に平行に)4方向完全
・靱性:壁開方向では良好、一般方向では卓越
・熱伝導性:物質中最高
↓
<外観的特徴>
・鏡のような研磨面
・鋭いファセットエッジ
・フェザー(割れ)やベアデッド・ガードル(ガードル部分のひげ状の割れ)の発生原因
・割れ口が階段状
・熱慣性テスターでダイヤモンドを示す
・息をかけた時に曇りがすぐ消える
d.その他
・親油性
・蛍光性:一般的にブルー
・分光特性:415nmに吸収線
・X線反応(透明)
⑪ダイヤモンド鉱山
高産出金額国:ボツワナ、ロシア、南アフリカ、カナダ多量産出国:ボツワナ、オーストラリア、ロシア、コンゴ民主共和国
高品質国:ナミビア、シエラレオーネ
低品質国:オーストラリア、コンゴ民主共和国
⑫オーストラリアのアーガイル鉱山
カラットベースではボツワナに続いて世界第2位の産出です。年間産出は5.66億ドル(620億円)と比較的少ないが、カラットでは3,066万cts.と世界シェアの18.7%を占めています。
品質的には50%が工業用、45%がニアジェム(歪みが大きく、不純物も沢山混入してしまっているものの、宝飾用として何とか使えるかもしれないというような原石)、5%が宝石用です。
きわめて高価なピンク、ブルー、グリーン、イエロー、ブラウンなどファンシーカラーの原石も産出しており、アーガイル社が自社で研磨し、販売しています。
⑬デビアス社のサイトとは
デビアス社は世界最大のダイヤモンド鉱山会社です。その傘下にはボツワナ、南アフリカ、ナミビア、タンザニアの鉱山があり、世界産出の43%のダイヤモンドを産出しています。デビアス社は原石を集中蓄積し、市場状況を見ながら放出量を加減することでダイヤモンドの価格安定を図ってきました。
このシステムを具現化したのが「サイトsight」です。
これはDTC(Diamond Trading Co., Ltd.ダイヤモンド販売会社)が年10回(5週に1回)ロンドンで開催されています。
参加できるのは「サイトフォルダー」と呼ばれる指定研磨業者・原石ディーラです。
売り手が提示した商品を、買い手は「1見の機会」を与えられ、交渉することができない暗黙のルールで成り立っています。(サイトとは「見ること」を意味します)
⑭デビアス社の「シングル・チャネル・マーケティング」
市場の在庫状況を見ながら放出量を加減する単一販路政策です。⑮日本のダイヤモンド輸入の下落
日本は前年比で3回ほど輸入が下落した年があります。1980年の第2次石油危機
1990年のバブル景気破綻不況
1997年の2次平成不況
2007年現在の輸入額は1973年(30年前)と同レベルに戻りました。
⑯ダイヤモンドの伝統的な研磨地と新興研磨地
<伝統的な研磨地>
・ベルギー16世紀ダイヤモンド研磨の町としてアントワープが黄金時代でした。
19世紀末にはコンゴより優先的にダイヤモンドを供給させる裏取引に成功し、世界一のカッティングセンターへと成長していきます。
しかし、1970年代に人件費の高騰に伴って、小粒のダイヤモンドは新興研磨地へと移行していきます。
2005年現在アントワープには約1,000人の研磨技術者がおり、1カラット以上の大粒で品質の良い原石を扱っています。研磨技術は非常に高いレベルにあり、世界最大の研磨ダイヤモンドのとレーティングセンターです。
・イスラエル
イスラエルは高いレベルの研磨技術を持ち、約2,000人が従事しています。
第2次世界大戦後1974年、建国と同時に入植したユダヤ人によって導入されたダイヤモンド産業はイスラエルの最大の輸出作業となりました。
ダイヤモンド研磨産業はテルアビブに集中しています。
研磨作業のコンピュータ化をいち早く取り入れ、1990年代に入ると最も活発な研磨地として発展しました。
しかし、1990年の日本のバブル崩壊はイスラエルに多大な影響を与えました。
2005年の主要な輸出先はアメリカ次いで中国の玄関口香港です。
現在はアントワープ同様、若者の業界離れや技術不足や高齢化が進んでいます。
・インド
金額べーすでは世界の研磨ダイヤモンドの生産の半分を超える55%、カラットベースでは70%のシェアを誇ります。
研磨産業の集中地はムンバイです。
従業者数は70万人から100万人とも言われ、その全体の5-7%を14歳以下の幼年労働者が占めています。
1980年当初の石油危機による世界不況により、インドの小粒ダイヤモンドの需要が増し、過去20年でインドのダイヤモンド産業は金額・量ともに5倍に拡大し、世界最大のカッティングセンターへ成長しました。
最近のインドの特性は安い労働力だけではなく、コンピューター制御による研磨装置使用により幅広い品質やサイズの生産ができるようになり、10ctsの大きさまで扱っています。
・アメリカ
1940年からナチスの迫害から逃れたユダヤ人によってダイヤモンド研磨技術が持ち込まれました。
研磨産業はニューヨークに集中しています。
研磨技術者は約400人で研磨技術のレベルは高く、人件費は世界で最も高いため2cts以上の高品質のものに限定されます。
<新興研磨地>
・アルメニア1991年ソビエト連邦崩壊により、外国からダイヤモンド研磨技術を習得し急速に成長しました。
現在約3,000人を雇用し、小粒のダイヤモンドを研磨しています。人件費は比較的低いが、研磨技術は高いです。
・中国
人件費が安く、潤沢な労働力が特徴です。
1980年代にDTCからの原石供給というバックアップにより本格的に産業が開始されました。
従業員数はインドに次いで世界で2番目に多いです。
0.5ctsの高品質の原石を扱っており、その技術はインドより高く、カラット当たりの人件費はインドよりやや高いと言われています。
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