④オールド・ヨーロピアン・カットと最近のラウンド・ブリリアント・カット
ダイヤモンドは開発された器具を使うことで次第に中心から放射状に研磨面が対称的に数多く刻まれるようになり、ブリリアント・カットへと進化していきました。18世紀初めにはブルーティング(ガードル部分の角を他のダイヤモンドで削って丸みを付ける共けずり)によってガードル輪郭を丸くして、合計58面体ファセットをつけた、オールド・ヨーロピアン・カットが登場します。ラウンド・ブリリアント・カットのルーツとなるカット方法です。
このころのカットは八面体の結晶1個から1個の製品しか得ていませんでした。
南アフリカで多量のダイヤモンド供給がされるようになった1910年頃には、高速回転する刃にダイヤモンドを押し当て石を切断できるソーイング・マシーンが発明され、1個の原石から2個の製品を得ることができるようになり、相対的な歩留まりが向上し、加工能率も向上しました。
ただし、最高の美しさを発揮する石のプロポーションとされるトルコウスキー案のブリリアント・カットはソーイングにより切断したとしても大幅な歩留まり低下を生じます。
オールド・ヨーロピアン・カットは今日のラウンド・ブリリアント・カット石と比較すると、テーブル面が小さく、キューレットが大きくて、全体の深さも相当深いものでした。
この種の加工に適する八面体の原石は非常に稀なので、歩留まり率を上げることが、カッターにとって最大の使命でもあったのです。
そのため今日のラウンド・ブリリアント・カット石と比較すると、石内部に入射した光の大半が
パビリオンから漏れ出て、輝きの少ない石が多かったのです。
光の内部反射や分散などを考慮した輝きの強いダイヤモンドが登場するのは20世紀になってからです。


※画像はダイヤモンドミュージアムより
http://www.cgl.co.jp/museum/f2/e2.html
⑤ダイヤモンド加工の特殊性
ダイヤモンドの加工はダイヤモンド固有の性質や希少性の高さのために色石加工とは比較にならない特殊な問題をいくつか抱えています。1.硬さの克服
物質中もっとも硬いので、切ったり(ソーイング)、研磨したり(ポリッシィング)するにはダイヤモンドの粉末を使用するほかありません。
技術が進化した今日でも多大の時間と労力を必要とします。
2.グレイン(結晶内の硬い軟らかい方向)の選択
原石の形状にかかわらず、石の内部で最も軟らかい六面体面は最も一般的にソーイングに利用される面であり、次に軟らかい12体面体は最も一般的に研磨に利用される面です。
グレイン方向は常に意識して作業を行う必要があります。
3.輝きをもとめて
ファセット間の角度や比率、対称性に富んだファセット配列など金属加工にも匹敵する精密な孤高技術が求められます。
4.重量保持率(歩留まり)を上げる
輝きを優先させたデザインで加工すると、原石からの重量の目減りは最も多くなります。
最も普及しているラウンド・ブリリアント・カットに加工しても、八面体の原石の50%以上が失われてしまします。
最終的な重量変化が価格に大きな差をもたらすので、カラーやクラリティの潜在性を見極めたうえで、輝きも維持し、しかも経済効率のよいプロポーションの石に加工するのがカッターの使命です。
⑥ダイヤモンドの加工手順
1.デザイン案を練って原石にマーキング(ソーイングかクリービングの指示)2.クリーピング
壁開によって原石の形を整える作業
3.ソーイング(鋸引き)
原石切断
4.ブルーティング(共ずり)
ガードルを丸くする
5.ファセッティング(刻面)
研磨してファセットを付ける作業。
⑦プロポーションとフィニッシュの分析要素
4C中の「カット」は研磨済みのダイヤモンドの「プロポーション」と「フィニッシュ」を指します。プロポーションは研磨のファセットの角度、相対的な寸法や割合および両者の相互関係を表します。
フィニッシュは研磨の質やカットの正確さ、あるいは対称性を表します。
ダイヤモンドカッターは光の効果が最大限に発揮できるよう、適切なプロポーションを施して石内外の反射光量を増大させ、かつ均質な反射光にするために丁寧にフィニッシュを施します。
⑧光学的効果によるダイヤモンドの美しさ
パビリオンのメイン・ファセットは、入射光を2度にわたり全反射させる鏡のような働きをするので、ダイヤモンドの角度の中では輝きに影響する最も重要な角度です。
ベゼル・ファセットの角度は主にパビリオンからきた光を分散させて外に出す、虹色のきらめきの程度に影響を与える角度です。
ダイヤモンドの外観に見られるブライトネス、ファイヤー、シンチレーションはダイヤモンドのオプティカル パフォーマンス(光学効果)と呼ばれ、見た目の美しさを官能評価する際の要素となります。
【ブライトネス】
「白色光」の内部および外部の反射の外観または程度を示します。
【ファイヤー】
スペクトルカラーに分散する光の外観または程度を示します。
【シンチレーション】
スパークル:ダイヤモンド、観察者または光源が移動するときにきらめく閃光部分の外観または程度を示します。
パターン:そのダイヤモンドが静止しているとき、または動いているときに見える、内部および外部に起因する明るい部分と暗い部分の相対的な大きさ、配置、コントラストを示します。

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