2014年8月4日月曜日

2-3 カラーストーン

①宝石の色

宝石の色は物体の色で、宝石に光があたっておこる反応を、人間の目が知覚して色を判断します。
白色光が宝石の中を通過する際、全ての波長を透過すればそのほうせきは無色として見えます。
全ての波長を反射すれば白色に、そして全ての波長を吸収すれば黒色に見えます。
また全ての波長にわたり可視光が等量吸収されると灰色に見えます。
これらが無彩色のグループであり、有彩色の場合は特定の波長が吸収され、残りの波長は透過あるいは反射されます。このような選択吸収が起こると、残りの透過・反射された光が宝石の色として現れます。
以上は白色光の場合ですが、光源の波長成分が異なると、宝石の色は違って見えます。
物体色を決定する光源の性質を演色性と呼びます。したがって色を比較するためには標準光源が必要となります。
また、カラーバリエティが豊富な宝石種の色相におけるカラーボーダーが問題となることがあります。
有彩色を客観的に判断するためには、色の3属性(色相 明度 彩度)を十分に理解しておくことは基本です。
これは色を定性的に表現するうえでも同じです。「色相に関する装飾語+明度、彩度に関する装飾語+基本色名」の形で表現されます。
例えば色相に関しては「帯赤の 帯黄の 帯青の 帯紫の 」
明度・彩度に関しては「冴えた 明るい 強い 濃い 浅い 鈍い 暗い 淡い 明るい灰色味の 灰色味の 暗い灰色味の」
基本色名は「赤色 橙色 黄色 黄緑色 緑色 青緑色 青色 青紫色 紫色 赤紫色」

②宝石の着色原因

物質によって光の吸収が起こるのは、物質中の電子が光のエネルギーの一部を吸収し、吸収されなかった波長が透過するからです。
a,遷移元素
宝石の最も代表的な着色原因は、8種類の遷移元素が宝石の主成分あるいは微量成分として含まれていることによります。
普通電子殻には電子が二つ対になって入っているのだが、遷移元素には電子が一つしか入っていない電子殻が内側に存在します。(不対電子)この状態は電子がより高いエネルギー準位に移動(隣の電子殻に移動すること=励起状態)しやすく、励起する際にエネルギーを吸収します。
その時に吸収されるエネルギーと可視光の波長はよく一致するため、色の原因となりやすいのです。
なお、このエネルギー量は結晶構造によって異なるため、不純物クロムがコランダムではルビーの赤色に、ベリルではエメラルドの緑色の原因となります。

b.電荷移動
実際の電子は隣り合ったイオン間で移動します。この移動に必要なエネルギーに相当する波長が吸収されると残留色が現れます。
ブルー・サファイヤでは、主成分のAlの一部を、不純物のFeとTiが置換すると、FeとTiとの間で電荷移動が起こり、青色が現れます。

c.着色中心
宝石の多くは結晶で固有の結晶構造を持っています。現実の結晶の中では原子の並びに狂いが生じています。これを格子欠陥と呼びます。
色の原因となるのは点状の格子欠陥です。
結晶は放射線照射を受けると格子の一部が壊され、点欠陥が新しく生まれその結果着色中心がでいて着色します。この色は光や熱によって着色中心の状態が変化すると消えるが、安定度は宝石種によって異なります。

d.禁止帯幅着色
半導体では電子が自由に動ける帯(価電子体、伝導体)と動けない体(禁止帯)の間のエネルギー差が小さく、自由電子と個々の原子に所属する電子が共存する状態となる。
例えばダイヤモンドは純粋であれば無色だが、B(ホウ素)が微量に含有されるとIIb型のブルーとなります。

e.有色インクルージョンの存在
もともとのボディーカラーではなく、高密度で含まれたインクルージョンの色が宝石の見かけの色として見えるものもあります。

 

③ガーネットの様々な宝石変種

日本でも人気の宝石ガーネット。
「ガーネット」とは同一結晶構造を示す一連の鉱物グループの名称です。
このグループには色も外観も全く異なり、ジュエリー素材として一般的に用いられている多彩な宝石変種があります。

・無色石
人造石(YAG、GGG)
ホワイト・グロッシャー・ガーネット

・赤色石
MgとFeが主成分として含まれるが、両者の割合は個体ごとに異なっています。
組成比の違いによって3つの変種グループに分けられます。
Feの増加に従い、屈折率と比重が比例的に高くなるので特性値を基に分類されます。
1.パイロープ・ガーネット
Mgを優勢とする
Feが少なく不純元素として含まれたCrが色の主因となるため美しい血赤色を示します。
Feが多くなるに従い、やや暗赤色となります。
2.ロードライト・ガーネット
中間的
紫色を帯びたしゃくなげの赤色であるが、血赤色や暗赤色のものも見られます。
最もポピュラーなガーネットの変種
3.アルマンティン・ガーネット
Feを優勢とする
ワインレッドの色。
Feに起因する自色のため、大きなサイズではやや暗色になりがちで、昔からカボジョン・カットの底部をくりぬいて石を薄くして明るく仕上げる「カーバンクル」と呼ばれるカッティングスタイルが考案されました。

・ピンク色石
半透明の「ピンク・ハイドロクロッシュラー・ガーネット」
ほとんどが黒色粒状のマグネタイト・インクルージョンの点在が特徴

・橙色石
1.スペンサルティン・ガーネット
ほとんど純粋なMnによる自色の明るい橙色で「マンダリン・ガーネット」のコマーシャルネームを持ちます。
2.ヘソナイト・ガーネット
澄んだ橙色からFeを含むやや暗い橙赤色
オイリーな外観を見せる糖蜜状組織と丸みを帯びたアバタイトの小さな結晶の点在が特徴
3.オレンジ・グロッシュラー・ガーネット
ヘソナイトのような内部特徴を示さず、澄んだ透明な印象

・黄色石
グロッシュラー・ガーネットとヘソナイト・ガーネットには帯緑黄色のイエローから褐黄色のゴールデンまでの変種が見られます。
1.アンドラダイト・ガーネット
大きな分散度をもち、明瞭なファイヤを示すのが特徴

・緑色透明石
1.グリーン・グロッシュラー・ガーネット
1967年に発見されたのは黄緑色のバラエティであったが、Vを含む美しいエメラルド様の緑色の原石が発見され、その産地ケニアのツァボ国立公園にちなんで「ツァボライト」と名付けられ定着しています。
2.デマントイド・ガーネット
希少性のため高い評価をされています。
明瞭なファイヤとホーステール・インクルージョンで知られ、コレクターストーンと言われていました。
FeよりCrが優勢
3.アンドラダイト・ガーネット
Feによるやや暗緑色あるいは褐緑色

・緑色半透明石
 ハイドログロッシュラー・ガーネット
通常は黒色粒状のマグネタイト・インクルージョンの点在が特徴であるが、これらを含有しない均一な緑色石は特に良質のジェイダイドに似ています。

・青色石
なし

・紫色石
なし

・褐色石
なし

・白色石
なし

・灰色石
なし

・黒色石
なし

 

④ひすい

緑色半透明の宝石
ジェイタイドと呼ばれる鉱物
輝石族という広く個溶体を形成する鉱物グループ中の一変種(他:スポジュメン エンスタタイト ダイオサプサイトなど)
均一でごく緻密な組織のジェイタイドは俗に「ろうかん」と称される高い透明度を示すが、
逆に荒く不均一なジェイタイドは透明度も低くなります。
本来は無色のワックスを使った表面光沢の仕上げは透明感のあるジェイタイドにはほとんど不要で、逆に後者のようなジェイタイドには効果が高いです。
一方、後者のジェイタイドに硬化樹脂を「含浸」する処理は、石をもろくさせるうえ、本来の透明度を改変させることになり、商取引では容認されていません。この処理には近年、無色のみでなく有色の樹脂も使われています。
色はCrに起因します。

⑤宝石に見られる光学効果

1.アステリズム(星彩効果)
スター・ルビーやスター・サファイヤで知られる効果です。
結晶方位に規制された2方向ないし3方向に発達した針状結晶からの反射に起因するもので、同様に条件が備われば他の鉱物にも出現します。
カボジョン・カットが必須です。
天然のスター石には意外に黒色や褐色の変種が多いですが、これらのほとんどは暗色の針状結晶の含有が、アステリズムとボディ・カラーの原因です。

2.シャトヤンシー
猫の目にたとえられる針状結晶やチューブ状インクルージョンそして成長組織などが平行に発達した石カボジョン・カットしたときに見られるものです。
キャッツ・アイと言えばクリソベリル・キャッツ・アイと思われがちであるが、天然、人造、模造問わず多種にわたり存在しています。

3.カラーチェンジ・タイプ
自然光下と人工光下で色調が異なってみる変色性
主としてCrやV(バナジウム)の含有によっています。
これらの着色元素は、スペクトルの黄色部を吸収し、赤色と緑青色領域をほぼ等しく透過するので、この光学効果が生じます。
アレキサンドライトがその代表例ですが、そのほかにも変色性を示す鉱物はあります。
ここ数年でカラーチェンジ・タイプの天然石の人気が高まり、特にサファイヤ、ガーネット、スピネルは広く市場に流通しています。

 

⑥生物起源の宝石

真珠やさんご、こはくなど生物起源の宝石は数多く存在しています。
1.アイボリー
動物の歯や牙で加工に十分な大きさのもの
象牙のほとんどはアフリカ象のものであるが、近年ではワシントン条約の規制なども影響し化石象牙であるマンモスの牙も使われています。

2.べっ甲
タイマイなどのウミガメの背甲で主成分は蛋白質でできた瓦のように重なる13枚の甲です。
温めると軟化する熱可塑性があります。
熱湯に浸して上でブレスする加工だけで、さらに大きな面積や厚さを得ることができます。

3.ジェット
研磨により樹脂光沢の高い輝きが得られる黒色不透明な宝飾素材です。
松拍科の樹木が化石化したもので、石炭層から見つかります。
鳥肌のような特有の表面構造をしています。

4.シェル(貝殻)
伝統的なシェル・カメオには2種類の貝が使われます。
ピンク色の地には天然のコンクパールの母貝であるピンクガイ、そして褐色地にはヘルメットガイの、それぞれ白色層にレリーフ彫刻したものです。


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