2014年8月5日火曜日

2-6 宝石のウィーク・ポイント

宝石に与えるダメージ要因は大きく分けて物理的なものと化学的なものがあります。
大まかにいえば、物理的要因はほうせきのう物理的性質との関連、つまり結晶構造との関連で宝石にダメージを与えるか否かが決まります。
化学的要因は宝石の化学的性質つまり化学組成との関連で作用します。

宝石に与えるダメージ要因

1.物理的要因

(1)力
壁開、ピッカースないしプリネル硬度、モース硬度という物理的性質と関連しています。
ダイヤモンド、トパーズのようにモース硬度が高くても、完全な壁開を持っているものもあります。

(2)電気と磁気
電気・磁気による直接的な影響はないが、それらにより発生した熱による影響は考慮する必要があります。
電磁波の一種である光は、宝石の色に変化を与える可能性があります。
有機染料については可視光においても褪色の危険性があります。

(3)熱
熱により膨張し、堆積が増加することにより、例えば宝石が固定されていれば、その部分に力が加わることになります。
また一般的に化学反応は温度が高いほど進行するため、他の物質との共存におおきな影響を与えます。

(4)放射線
多くの宝石は放射線で色が変化します。
ダイヤモンドの放射線着色、トパーズの青色など人工的に放射線を照射して色を変えている例は多く存在します。

2.化学的要因

(1)酸
酸は多くの宝石と反応します。
特に生物起源の宝石、炭酸塩の宝石(カルサイト、アラゴナイト、ロードクロサイト、アズライトなど)、硫酸塩や燐酸塩の宝石(アラバスタ、アパタイト、トルコ石)は要注意です。
酸には強酸から弱酸までさまざまな酸があります。
日常では硫酸はバッテリー液などに、塩酸はトイレの洗浄剤に使われています。食用の酢はほとんどが酢酸であるし、マヨネーズやドレッシングには酢が入っています。
汗の主成分は塩化ナトリウムの水溶液であるが、微量の乳酸、脂肪酸を含みます。

(2)アルカリ
アルカリは一般的に有機物を溶かすので、有機質宝石はダメージを受けます。
日用品には石鹸、排水管洗浄剤などがあります。

(3)水
純粋な水は宝石と反応することはないが、有機物は多少溶解するので、生物起源の宝石は水中に長時間つけることは好ましくありません。
また水道水は塩素で消毒されており、井戸水はや酸性であるなどそれぞれの成分を考慮する必要があります。

(4)塩素
漂白作用があるので、生物起源の宝石、マラカイト、トルコ石、ラピスラズリなどは変色の恐れがあります。

(5)硫黄
塩素ほどではないが、漂白作用があります。銀とはすぐに反応し黒変させるので、銀を含む貴金属は避けなければなりません。
温泉だけでなく空気中にも含まれるため、ゆっくりと黒変していきます。

(6)溶剤
一般的に有機物質を素早く溶解します。
また、油、樹脂を溶かすものもあるため、透明液で含浸されたエメラルド、ジェイダイトも変色します。
アルコール、シンナー、エーテル、ベンジン、ガソリンなどさまざまなものがあります。
身近なものとしては、香水、ヘアスプレー、化粧品、除光液、接着剤などが該当します。

(7)油脂
有機質をわずかに溶かすため、有機宝石は避ける必要があります。
油脂が酸化するなどして変色する恐れもあります。
身近なものとしては、クリーム状の化粧品、食用油、マーガリン、ドレッシング、人から出る油などがあります。

(8)液体
マラカイト、トルコ石のような多孔質の宝石、めのう、ジェイタイトのような潜晶質あるいは多結晶の宝石、さらにはエメラルドのようにクラック(裂け目)の多い宝石は溶液物質が付着して浸透しないように注意する必要があります。

 

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